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サンクコストに捉われない判断の難しさと乗り越え方とは?

本記事のポイント3点

1:現実の経営判断は、過去の投資金額にどうしても捉われる

2:経営判断は常に、未来に対して描いた仮説の投資価値のみで判断すべき。過去の投資によって分かった情報はあくまで判断材料の一つ

3:『事業の理解者』『経営判断の主体』『お金の出し手』が三位一体となる体制作りか、経営判断ルールの策定が、実践のポイント

利益成長支援に強い、Webマーケティングコンサルティング会社 ハワーズ代表の黒石健太郎です。

サンクコストとは、既に投資した事業から撤退しても回収できないコストのこと。

それまでに費やした労力やお金、時間などを惜しんでしまい、その惜しむ気持ちが今後の意思決定に影響を与えることを、サンクコスト効果と呼ぶ。

サンクコスト効果の影響を受けることで、合理的な意思決定が阻害され、不採算事業を継続したり、無駄な追加投資をしてしまうことが発生する。

そのため、「サンクコストに捉われない経営判断が重要だ」とはあちこちで言われていることだと思うが、現実の運用においてはサンクコストに捉われない難しさを実感したことがあった。

本記事では、その実体験を基に、サンクコストに捉われない意思決定の難しさとそのリスク、運用の壁と乗り越え方について整理したい。

サンクコストに捉われない意思決定の難しさ

私が特に難しさを感じたのは、ある会社Aを代表として経営していた時のことである。

当時は、当該会社Aの全株式をある別会社Bに売却してしまっていたため、親会社Bが存在した。

さらに、その親会社Bは、ある投資ファンドCが100%出資して経営していたため、経営判断の当事者としては、『A社社長である私』に加えて、『親会社Bの経営陣』、『投資ファンドCの投資担当』という布陣で経営の意思決定を行なっていた。

私自身は、当該会社Aの経営を担う中で、ある事業の先行きに厳しさを感じ、経営会議に撤退を起案したことが何度かあった。

しかし、最初に起案した際には、親会社BはAの株式取得に際してかなりの金額を投資していたこともあるのか、「まだ可能性があるのではないか」という話になり、撤退議論は流れた。

それでも事業の兆しが見えずに再度撤退を起案した際には、投資ファンドCからも「流石にこの事業がなくなっては…」という声が上がり、再度、仮説検証を続けることになった。

サンクコストに捉われたことで顕在化したリスクは数千万円

その後、追加で実施した仮説検証からの兆しが出なかったため、最終的には、事業を撤退することになった。

ちなみに、最初に撤退を起案したタイミングから最終的に撤退するまでにかかった期間は結局10ヶ月。

意思決定先送りによる毎月の赤字垂れ流しにより、結局は、さらに累計数千万円のお金を失うことになったのだ。元々の出資額に加えて、この金額を追加で失ったのである。

そもそもA社はビジネススクールを運営している会社であり、投資ファンドCから来ている経営陣も金融機関出身者である。

全員が、サンクコスト効果なんて知っている体制で意思決定していても、現実の経営判断においては、サンクコスト効果に捉われずに意思決定することが難しい現実を痛感した。

サンクコストに捉われない意思決定の壁と乗り越え方

当時の私たちが陥っていた経営判断は、以下の形式だった。

「なんとかこの事業を維持継続し、成長させられないか」という思いが先行し、事業改善・事業成長に対する追加仮説は甘く緩いものしかなかったにも関わらず、その仮説検証の継続を許容してしまっていたのだ。

当然だが、本来の投資判断は、未来に取り組む施策/仮説自体の精度や投資価値だけで行われるべきものである。

にも関わらず、あるべき形で意思決定が行われなかった理由は、『事業を理解している人』『事業の未来を考えている人』と『お金の出し手』と『判断を行う主体』がバラついていたからだと考えている。

最初の起案の段階で、私は、「仮に、私が、A社の100%オーナー経営者であれば、この事業は今すぐ停止する」と申し上げていた事実もある。

おそらく、過去の仮説検証を通じてその時点までに何が分かっているのかを一番理解している人が、もっとも未来の施策/仮説について精度高く描くことができるはずであり、その人自体が金銭的にリスクも負って経営判断の全てを行う体制が、本来、正しい経営判断を行なっていくにはベストなのだと感じている。

しかし、現実に存在する会社においては、経営判断を行う経営者が、その投資資金全額を全てポケットマネーで賄っている会社は少ないのではないだろうか。

株式比率は100%オーナー経営であったとしても、銀行融資には依存していることで、他人のお金で事業運営している会社も多いのではないだろうか。

『事業の理解者』『経営判断の主体』『お金の出し手』の三者が分離することが、あちこちの会社で、サンクコスト効果に捉われない意思決定を阻害しているのではないかと考えた。

サンクコスト効果の乗り越え方

上記を踏まえると、正しい意思決定を行うためのあるべき姿は、『事業の理解者』『経営判断の主体』『お金の出し手』が三位一体になっていること。

100%自己資金経営を行うオーナー経営者こそが、最も正しい意思決定をしやすいのではないかと考えられる。

それが難しい場合は、「三者が分離することで、サンクコスト効果に流されない判断は行えなくなる」という前提で、「投資判断は常に次に取り組む施策/仮説の精度&投資価値のみで判断する」などの経営判断ルールを決めておくしかないと考えている。

私は今、ハワーズという会社で広告代理店を運営しているが、クライアント様から依頼を受け、広告の運用を始めようとすると、初期段階でLP制作が必要になるなど一定の初期コストがクライアント様に発生してしまうことが多い。

そのため、一定期間、広告運用をさせて頂いた後に、仮にこれ以上広告運用を継続しても広告効果の担保が難しそうな状態に至ったとしても、クライアント様が「せっかく投資した初期投資がもったいないから」と施策の継続を希望してしまうことがたまに発生する。

そんな時には、ぜひ、この記事を見ていただき、施策継続の判断材料にして頂きたいと思う。

私自身は、私自身の仕事がなくなることは全く気にしていないので、私に配慮せずにフラットな経営判断を行い、是非ともトータル利益最大化を実現いただきたいと思う。

著者プロフィール 黒石健太郎


株式会社ハワーズ 代表取締役社長
「成功確率が格段に上がる 起業の準備」(かんき出版)著者

2006年東京大学法学部卒。株式会社リクルート入社後、採用・育成・社内活性コンサルティング等の営業、新規事業の戦略企画、立ち上げに従事。2013年6月に、起業の学校を運営する株式会社ウィルフを設立し、代表取締役社長に就任。 サイバーエージェント主催起業家コンテスト「アントレプレナーイノベーションキャンプ」優勝。その後、サイバーエージェント藤田晋氏/パズドラ創業者孫泰蔵氏/ベネッセグループ創業家福武氏/East Ventures/LIFULL/クックパッドなどからの資金調達に成功し、事業を拡大。2018年9月より、国立大学法人金沢大学 特任准教授 に就任。その後、関西学院大学、近畿大学などでも教鞭をとる。コロナ禍以降、全サービスをWeb化したことで事業が急成長し、2021年に株式会社ウィルフの全株式を売却。2022年にWebマーケティングの実績を基に、株式会社ハワーズを立ち上げ、代表取締役社長に就任。